道路の樹

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色合いは優しそうなのに、この樹をどこか不気味に思っていた。

その樹はずっと曇って見えていた。

幼稚園の頃に、

友達のほくろから毛が生えていただけで気持ち悪くなっていたことを思い出した。

あの頃が懐かしい。

樹登りはしていたほうだった。

樹に愛情もあった。

樹の絵本で泣いたこともあった。

それでもこの樹が怖かった。

あの児と同じだ。

大人になったあの児と、今何を話すだろう。

僕が事業所に来るときも帰るときも見守ってくれる樹。

連日の雨が止んで晴れ間がさしたときのこと。

背中が丸くなった母を見た。

母と目が合うと、

「いってらっしゃい」も優しく言われた。

反抗期というものはなかった。

ただ何も言わず静かに過ごしてきた。

樹は僕を映したものなのかもしれない。

僕は自分が独り立ちしたい気持ちに気づいた。