寂しい鏡
6年前、自分が精神障がい者だと、
数少ない友人に打ち明けた。
彼は少し笑って、それ以上話さなかった。
僕は受け入れてくれたのかと思った。
次に会ったとき、彼はいつものように、
雄弁にビジネスの成功者の話をし、
そこから彼は自分の将来の話をする。
その終わりに、僕は「なれたらいいね」と言った。
これが僕らの関係だった。
だが、「お前には関係ないけどな」
彼はそう言った。
そのとき僕は笑いながら言おうとした。
「俺だって将来、今の経験を生かして福祉分野で」
「福祉分野に興味なんてない」
彼は僕の話をさえぎって即答した。
「お前の経験になんて興味ないし、お前の話は価値を感じない」
それから彼は予備校に通ってから大学に入学し、
ラインで「もう関わることがないと思うわ、じゃあな」
と僕に告げた。
それから6年後の今、彼から連絡があった。
内容は正社員として就職した会社が東証1部上場企業だということ、
大学時代に2度自分の絵が天神橋筋商店街の垂れ幕に採用されたことや、
おすすめの映画4作の感想だった。
彼らしい内容だったが、
その後に「叱られてばかりで病みそうやわ」
と愚痴を言った。
最後に彼は
「頑張れよ、なあ、頑張れよ」
と何度も言っていた。
隠そうとして、隠しきれない双方向のメッセージは、
彼のたどり着いた価値ある、
コミュニケーション方法なのかもしれない。