マイラインと偏見
バスの中、女性の座る座席の前に立っていた。
前の女性の視線を感じた。
視線を落とすと、女性はハンドバッグを肩にかけた。
僕は女性が降りるのだと思って、混んでいる中どうにか女性の立つスペースをあけた。
バス停に着いた。
女性は降りない。
女性は次のバス停でも降りなかった。
表情は見えなかった。
僕はイラついていた。
騙されたと。
僕には女性が自分の都合で、余裕を持ちたかったのだと思ったのだ。
疲れている中、親切心で周りに迷惑までかけてスペースをあけたのだ。
なのに、この座っている女はなんだ。
まるで学校のスクーリングのときの女みたいじゃないか。
グループワーク時に女だけでぺちゃくちゃ関係ないことを話し、
呆れて僕が本を読み出すと「いきるな!」と自分勝手に、
自分が一番偉いんだとでも言いたいような身勝手な女。
その上、誰も謝る素振りもない。
結構グループワークは進まず、散々な発表になった。
女性に対して偏見を持ちたくなる苦い記憶だ。
この座っている女に怒りが収まらなかった。
幸いにも後方の席が空いたので座ったが、
そのとき、僕は偏見を持っていることに気づいた。
女性がバスでカバンを背負ったら、降りるという偏見だ。
僕はそこまで自分の基準がないから、柔軟に判断できると思っていたが、
無自覚になるだけで、理由もわからず感情を抑えられなくなるのだとしたら、
とても危険なのかもしれない。
基準があろうとなかろうと、どちらも苦しい。
人生に楽な道はないようだ。